「各種鑑別試験」大百科!

下肢

Newton test

目的

仙腸関節の捻挫を検査する。

方法および評価

腹臥位:術者が患者の仙骨を圧迫する。

背臥位:術者が患者の上前腸骨棘を圧迫する。

側臥位:術者が患者の腸骨を圧迫する。

いずれも仙腸関節部に圧痛があれば陽性。

SLR test (Straight Leg Raising test)

目的

坐骨神経(L4〜S3)を伸長し、神経根の刺激を検査する。

方法および評価

背臥位。検査する下肢を股関節基本位にする。一方の手を足首の下に置き、他方の手は膝蓋骨の上に置く。膝関節を伸展に保ったまま下肢を挙上していく。患者が痛みを訴えたところで挙上を止め、下肢と検査台との角度を測定する。

角度が70度未満で坐骨神経に沿った疼痛が誘発された場合を陽性とする。陽性の場合は、L4 – L5またはL5 – S1間の椎間板を代表とする下位腰椎椎間板ヘルニアが強く疑われる。

Lasègue test

目的

坐骨神経(L4〜S3)を伸長し、神経根の刺激を検査する。

方法および評価

第1手技

SLR testと同様。

第2手技

背臥位。患肢をベッドに戻し、膝関節と股関節を屈曲させ、臀部の圧迫を除いて疼痛の軽減が得られれば陽性(ラセーグ徴候)。

大腿神経伸長テスト(femoral nerve stetch test)

目的

L1〜L4の神経根を伸長し、神経根の刺激を検査する。

方法および評価

腹臥位。術者は患者の下腿を把持し、膝関節を90度屈曲位として、把持した下腿を上方に引き上げることによって股関節を伸展させる。(腰椎前彎による代償を避けるため、骨盤を十分に固定する。)大腿神経に沿った疼痛が誘発された場合を陽性とする。陽性の場合は、L3 – L4間の椎間板を代表とする上位椎間板ヘルニアが疑われる。

Allis sign

目的

片側の先天性股関節脱臼(発育性股関節形成不全)を検査する。

方法および評価

背臥位で両膝を屈曲させ、両下腿を揃えたときの膝の高さを比較する。

股関節脱臼側では膝の位置が低くなる。

click 徴候

目的

新生児の先天性股関節脱臼(発育性股関節形成不全)を検査する。

方法および評価

ここではOrtolani(オルトラーニ法)を示す。新生児を背臥位で股および膝関節90度屈曲位に保持する。術者の母指を大腿内側に、他の指を大腿外側におき、股関節を大腿骨長軸方向に軽く押し付ける。この際、clickを触知する。ついで、股関節を外転・外旋(= 開排)させて中指で大転子を下から押し上げるようにすると、大腿骨頭が寛骨臼に整復される音(click)を触知する。

clickが触知されれば陽性。

Trendelenburg 徴候

目的

片脚立ちになることで、股関節の安定性や股関節外転筋力を検査する。

方法および評価

患側を軸足にして、反対側の下肢をゆっくり上げて片脚立ちになるように患者に支持する。下肢を上げた側の骨盤が沈下したら陽性。股関節の脱臼や外転筋の機能低下を疑う。

Thomas test

目的

腰椎の前彎を取り除くことで、股関節の屈曲拘縮を検査する。

方法および評価

背臥位。術者は腰椎の下に手を入れておき、腰椎の前彎がとれるまで片側の股関節を屈曲させる。腰椎の前彎がとれると骨盤の前傾が緩和されので、検査側の股関節に屈曲拘縮が存在すると大腿が引き上げられることになる。検査台と浮き上がった大腿部との成す角度が屈曲拘縮の角度である。

Drehmann 徴候

目的

大腿骨頭すべりを検査する。

方法および評価

背臥位。股関節を屈曲させたときに、患肢が外転・外旋していくと陽性。

尻上がり現象

目的

大腿四頭筋、とくに大腿直筋の拘縮を検査する。

方法および評価

腹臥位。術者が膝関節を屈曲させたとき、大腿直筋の伸長性が失われていると、起始(下前腸骨棘)が停止(脛骨粗面)に近づくことで筋長を保とうとするため、骨盤が前傾する。これが腹臥位における股関節の屈曲、すなわち「尻上がり」として観察される。

McMurray test

目的

膝関節半月の損傷や断裂を検査する(特に半月後部の損傷をみるために考案されたもの)。

方法および評価

背臥位。膝を最大屈曲位とし、内・外側の膝関節裂隙に手指を当て、下腿に回旋ストレスを加えながら膝を伸展させる。膝を伸展中に、疼痛が誘発されたり、「カクッ」「ポキッ」「パチン」などの音が聞こえたり、関節裂隙に軽い脱臼音(click)が触知されたら陽性。半月の損傷や断裂を疑う。

外側半月の損傷では、下腿内旋で膝を伸展させる時に陽性。

内側半月の損傷では、下腿外旋で膝を伸展させる時に陽性。

Apley test(圧迫テスト)

目的

関節を圧迫して、膝関節半月の損傷や断裂を検査する。

方法および評価

腹臥位で膝を90度屈曲位とし、足部を押さえて膝を圧迫しながら下腿を回旋させる。関節裂隙に疼痛が誘発されれば陽性。半月の損傷や断裂を疑う。

Apley test(離開テスト)

目的

膝関節を離開することで側副靭帯にストレスをかけ、これらの靭帯の損傷・断裂を検査する。

方法および評価

腹臥位で膝を90度屈曲位とし、患者の大腿部を術者の膝で検査台に固定する。両手で下腿遠位部を持ち、検査台から引き離すように牽引し、脛骨を大腿部から離開する。この位置で、下腿を内外旋して、膝関節の内側あるいは外側に疼痛が再現されたら、それぞれ内側あるいは外側の側副靭帯の損傷・断裂を疑う。

側副靭帯ストレステスト

目的

膝関節に内反あるいは外反のストレスをかけて、関節周辺の靭帯を検査する。

方法および評価

① 外反ストレス

背臥位。足首をつかんで検査台から持ち上げ、検査する膝関節を最大伸展位に置く。他側の手を膝関節外側にあてて内側方向に圧迫する。足首をつかんだ手は下腿を外反方向に引く。ついで、膝関節を20〜30度屈曲位として同様の手技を繰り返す。膝関節の内側関節裂隙が広がれば陽性。

膝関節屈曲位で陽性の場合:内側側副靭帯の損傷が疑われる。

膝関節伸展位で陽性の場合:内側側副靭帯のほかに、前・後十字靭帯の損傷の合併が疑われる。

② 内反ストレス

外反と逆の手技を施す。膝関節の外側関節裂隙が広がれば陽性。

膝関節屈曲位で陽性の場合:外側側副靭帯の損傷が疑われる。

膝関節伸展位で陽性の場合:外側側副靭帯のほかに、前・後十字靭帯の損傷の合併が疑われる。

前方引き出しテスト

目的

脛骨近位部を前方に滑らせて、前十字靭帯の検査をする。

方法および評価

背臥位。膝を90度屈曲位とし、患者の足を術者の臀部でかるく固定した状態で、両手で脛骨近位部を前方へ引く。脛骨が5〜6mm以上前方に引き出されれば陽性とされ、前十字靭帯の損傷・断裂が疑われる。

Lachman test

目的

脛骨近位部を前方に滑らせて、前十字靭帯の検査をする。

方法および評価

背臥位。膝を20〜30度屈曲位とし、大腿遠位部を片手で把持し、他方の手を脛骨近位部の後方にあて前方に牽引する。陽性の場合は脛骨の前方への引き出しやソフトなend feelが認められ、前十字靭帯の損傷・断裂が疑われる。

N test

目的

膝関節の外反と下腿の内旋により、前十字靭帯を検査する。

方法および評価

背臥位。患側膝90度屈曲位。足部を片手で把持し、もう一方の手を膝の外側に置き、その母指を腓骨頭の後方に当てる。まず膝関節に外反力を加え、次に下腿に軸圧とともに内反力を加え、さらに腓骨近位部に前方への押し出し力を加えつつ、膝を伸展させていく。

陽性の場合は、約20度屈曲位付近で脛骨の内旋亜脱臼(突然に下腿がガクッと内旋しつつ前方に滑る現象)が認められ、前十字靭帯の損傷・断裂が疑われる。

後方引き出しテスト

目的

脛骨近位部を後方に滑らせて、後十字靭帯の検査を行なう。

方法および評価

前方引き出しテストと同じ肢位(背臥位。膝を90度屈曲位とし、患者の足を術者の臀部でかるく固定した状態)で、両手で脛骨近位部を後方へ押す。母指を関節裂隙に置くと、陽性例では脛骨近位端の後方移動が触知されやすい。脛骨が後方に6mm以上滑れば陽性。後十字靭帯の損傷・断裂を疑う。

parella apprehension test

目的

膝蓋骨に外側方向のストレスを加えて、脱臼を検査する。

方法および評価

背臥位。検査側の膝関節を30度屈曲位に置く。大腿四頭筋が完全にリラックスしていることを確認する。ついで、膝蓋骨をゆっくりと外側方向に押す。

大腿膝蓋関節が不安定な場合、膝蓋骨があたかも脱臼するかのように感じられ、患者はあわてて大腿四頭筋を収縮させて膝蓋骨を元の位置に戻そうとする(脱臼恐怖感を訴えられることもある)。以上が観察されたら陽性である。

Thompson test

目的

アキレス腱断裂を検査する。

方法および評価

術者が下腿部を掴んだとき、反射的に足部が底屈すれば正常。底屈しなければアキレス腱断裂を疑う。

コメント

タイトルとURLをコピーしました