体幹装具の分類
体幹装具はアプローチする部位や目的によって以下のように分類されます。
- 頸椎装具
- 頸胸椎装具
- 胸腰仙椎装具
- 腰仙椎装具
- 仙腸装具
- 側彎症装具
これらの中でも国家試験などでよく見かける代表的なものものを紹介します。
またあくまで参考程度なのですが、各装具の運動方向に対する制限能力の高さも“◯,△,×”で表現しています!
頸椎装具
頸椎カラー
頸椎カラーにはスポンジ製のものとポリエチレン製のものがある。
マフラーのように首の周りに巻いて、下顎角(いわゆる“エラ骨”)で支えるようにして装着する。
主に前後屈の動きを制限する。
前屈制限 | 後屈制限 | 側屈制限 | 回旋制限 | 免荷 | |
頸椎カラー | ◯ | ◯ | × | × | △ |
フィラデルフィアカラー
発泡ポリエチレン製の頸椎装具で、前後で挟み込むようにして装着する。
頸椎カラーに比べると、側屈と回旋方向の制限力が高い。
前屈制限 | 後屈制限 | 側屈制限 | 回旋制限 | 免荷 | |
フィラデルフィアカラー | ◯ | ◯ | △ | △ | △ |
支柱式
支柱式には2本〜4本の支柱があり、多くは“ターンバックル式”を用いている。
2本支柱の場合は前後屈を主に制限し、支柱の数が増えるにつれ制限可能な方向も増える。
前屈制限 | 後屈制限 | 側屈制限 | 回旋制限 | 免荷 | |
支柱式(2本支柱) | ◯ | ◯ | × | × | △ |
支柱式(4本支柱) | ◯ | ◯ | ◯ | △ | ◯ |
頸胸椎装具
モールド式
熱可塑性樹脂を用いて成形した装具。
そのため通気性に問題がある。
またフィッティングは高いが、採型の必要があるため利用者への負担を考慮しなければならない。
前屈制限 | 後屈制限 | 側屈制限 | 回旋制限 | 免荷 | |
モールド式 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | △ |
SOMI ブレース
正式には“sterno occipital mandibular immobilizer brace”という。
SOMI ブレースは以下のようにいくつかのパーツにより構成される。
- 胸部プレート
- 肩サポート
- 後頭部サポート
- 下顎サポート
- ヘッドバンド
ヘッドバンドを装着すれば、下顎サポートとその支柱を外しても、前屈制限をしつつ食事が可能となる。
前屈への制限力は高いが、側屈や後屈方向への制限はやや劣る。
前屈制限 | 後屈制限 | 側屈制限 | 回旋制限 | 免荷 | |
SOMIブレース | ◯ | △ | △ | ◯ | △ |
ヘイロー装具(ハローベスト)
体幹を覆うHalo vestから支柱が伸び、頭部のHalo ringと連結される。
このHalo ringから数本のピンが出ており、このピンが頭蓋骨とヘイロー装具とを直接固定している。
頭蓋骨を直接固定しているため、頸椎部の固定性能が最も高い装具となる。
前屈制限 | 後屈制限 | 側屈制限 | 回旋制限 | 免荷 | |
ヘイロー装具 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
胸腰仙椎装具
軟性コルセット(ダーメンコルセット)
通気性の良いメッシュ生地で覆われており、補強材として薄い鋼性のバネまたはプラスチックが縦に数本挿入されている。
上縁は前面では胸骨上切痕の下約 3 cm の高さ、後面では肩甲棘を覆う高さまでとする。
下縁は前面では上前腸骨棘を覆い恥骨結合上約 2 cm の高さ、後面では骨盤帯と同じ高さとする。
しっかりとした鋼性支柱で支えられているわけではないため、上位胸椎における固定性は低いが、腹圧を高めることで下位胸椎〜腰仙椎への支持力を生んでいる。
前屈制限 | 後屈制限 | 側屈制限 | 回旋制限 | 腹圧 | |
軟性コルセット | ◯ | ◯ | △ | △ | ◯ |
テイラー型
構成要素
前面
-
- 腹部前当て
後面
-
- 骨盤帯
- 後方支柱
- 肩甲間バンド
その他
-
- 腋窩ストラップ
前屈制限 | 後屈制限 | 側屈制限 | 回旋制限 | 腹圧 | |
テイラー型 | ◯ | ◯ | × | △ | ◯ |
ナイトテイラー型
先述した“テイラー型”と後ほど紹介する腰仙椎装具の“ナイト型”を組み合わせた装具。
テイラー型にナイト型の胸椎バンドと側方支柱が加わったことにより、側屈と回旋方向への制限力が向上している。
前屈制限 | 後屈制限 | 側屈制限 | 回旋制限 | 腹圧 | |
ナイトテイラー型 | ◯ | ◯ | ◯ | △ | ◯ |
スタインドラー型(フレームコルセット)
胸腰椎をフレームで覆うような構造となっている。
鋼性を高めるために、骨盤帯は腸骨稜上縁を通るフレームが追加された二重骨盤帯となっている。
構成要素
前面
-
- 前方支柱
後面
-
- 骨盤帯(二重骨盤帯)
- 後方支柱
側面
-
- 側方支柱
その他
-
- 肩甲骨上部から腋窩を通り、前方支柱へとつながるフレーム
- 肩甲骨上部から腋窩を通り、前方支柱へとつながるフレーム
前屈制限 | 後屈制限 | 側屈制限 | 回旋制限 | 腹圧 | |
スタインドラー型 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
モールド式
熱可塑性樹脂を用いて成形した装具。
そのため通気性に問題がある。
またフィッティングは高いが、採型の必要があるため利用者への負担を考慮しなければならない。
前屈制限 | 後屈制限 | 側屈制限 | 回旋制限 | 腹圧 | |
モールド式 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
ジュエット型
前後の3つのパッドにより、3点固定にて胸腰椎の前屈を制限する。
構成要素
前面
-
- 胸骨パッド(上縁が胸骨上切痕の下約 3 cm)
- 恥骨パッド(下縁が恥骨結合の上約 2 cm)
後面
-
- 背部パッド
側面
-
- 側方支柱
前屈制限 | 後屈制限 | 側屈制限 | 回旋制限 | 腹圧 | |
ジュエット型 | ◯ | × | × | × | × |
腰仙椎装具
軟性コルセット(ダーメンコルセット)
構造や役割は胸腰仙椎装具の軟性コルセットと同様であるが、アプローチするレベルの高さが低くなるため、自ずと上縁の高さも低くなる。
上縁は前面では剣状突起の下 3 〜 4 cm の高さ、後面では肩甲骨下角の下約 3 cm とする。
下縁は胸腰仙椎装具の軟性コルセットと同様で、前面では上前腸骨棘を覆い恥骨結合上約 2 cm の高さ、後面では骨盤帯と同じ高さとする。
罹患した脊椎のレベルによっては上縁の高さが変化する場合もあります!
前屈制限 | 後屈制限 | 側屈制限 | 回旋制限 | 腹圧 | |
軟性コルセット | ◯ | ◯ | △ | △ | ◯ |
ナイト型
構成要素
前面
-
- 腹部前当て
後面
-
- 骨盤帯
- 後方支柱
- 胸椎バンド
側面
-
- 側方支柱
上縁と下縁の位置は腰仙椎装具の軟性コルセットと同様である。
前屈制限 | 後屈制限 | 側屈制限 | 回旋制限 | 腹圧 | |
ナイト型 | ◯ | ◯ | ◯ | × | ◯ |
チェアバック型
ナイト型より側方支柱を取り除いた構造。
そのため、側屈制限は期待できません!
構成要素
前面
-
- 腹部前当て
後面
-
- 骨盤帯
- 後方支柱
- 胸椎バンド
前屈制限 | 後屈制限 | 側屈制限 | 回旋制限 | 腹圧 | |
チェアバック型 | ◯ | ◯ | × | × | ◯ |
ウィリアムス型
構造の特徴としては、後方支柱ではなく斜方支柱となっていることである。
またウィリアムス型の改良型で、側方支柱にクレンザック継手を取り付けた“フレクションブレース(flexion brace)”というものもある。
構成要素
前面
-
- 腹部前当て
後面
-
- 骨盤帯
- 斜方支柱
- 胸椎バンド
側面
-
- 側方支柱
- 側方支柱
前屈制限 | 後屈制限 | 側屈制限 | 回旋制限 | 腹圧 | |
ウィリアムス型 | × | ◯ | ◯ | × | ◯ |
モールド式
構造や役割は胸腰仙椎装具のモールド式と同様であり、高さの設定も他の腰仙椎装具に準ずる。
前屈制限 | 後屈制限 | 側屈制限 | 回旋制限 | 腹圧 | |
モールド式 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
仙腸装具(仙腸ベルト&大転子ベルト)
向かって左が“仙腸ベルト”で、右が“大転子ベルト”になる。
他の体幹装具とは異なり運動制限を目的とはせず、仙腸関節の固定や腹圧の上昇、保温などを目的としている。
側彎症装具
その名の通り、側彎症に対して処方される装具です。
側彎症については以下の記事で紹介していますので、こちらも合わせてご覧ください!
ミルウォーキーブレース
側彎の頂椎がTh7以上で適応となる装具。
各部の名称は以下のようになる。
ミルウォーキーブレースは前方と後方にかかる力をアウトリガーを用いることで、回旋方向の矯正力を高めている。
ボストンブレース
側彎の頂椎がTh8以下で適応となり、上位胸椎の立ち直り反射を期待した装具。
左右対称に製作された熱可塑性樹脂の本体の内面にパッドを取り付け、トリミングラインを考慮して圧迫と開放により側彎の矯正を行なう。
各パッドの圧と骨盤帯のカウンターによる3点固定で矯正を図る。
OMCブレース
側彎の頂椎がTh8以下で適応となり、上位胸椎の立ち直り反射を期待した装具。
OMC型(Osaka Medical College type brace)、つまり大阪医科大学で開発された。
ボストンブレースのような本体の骨盤帯から“ハイソラチックパッド(high thoracic pad)”と呼ばれる部品が付属している。
【胸椎パッド + 腰椎パッド + 骨盤帯によるカウンター】による3点固定
これにより、一次カーブと二次カーブの両方にアプローチを掛けることが可能。
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