脳幹
脳幹は“中脳, 橋, 延髄”の3つかなり、大脳や小脳の情報の中継地点として機能します。
呼吸, 血液循環, 体温調節など生命活動の中枢となります。
いわゆる“植物状態”とは、大部分の脳機能が失われていても、脳幹の機能は保たれている状態を指します。
逆に脳幹の機能まで失われてしまうと、“脳死”となり10日程度で死に至ります。
中脳
間脳の内側に位置し、大脳皮質と小脳、脊髄などを結びつけている重要な中継地点。
聴覚の中継をしたり、眼球運動の制御も行なう。
中脳蓋
視覚、聴覚の反射中枢。
中脳被蓋
黒質
線条体にむけてドーパミンを放出する神経が出る。
赤核
大脳の運動野、小脳核からの入力を受けて、赤核延髄路や赤核脊髄路に出力して不随意運動の調節を行なう。
赤核脊髄路(錐体外路)
- 赤核からすぐに交叉して、脳幹腹外側部、脊髄側索を下行する伝導路
- 随意運動を行なう錐体路のはたらきを助けて、上肢の前腕屈筋の収縮活動を高めるはたらきがある
大脳脚
大脳皮質から出る投射線維の一部で、内包からの下行性伝導路の通り道。
橋
大脳や小脳などの中枢と末梢との神経線維の中継地点となり、連絡を可能にする。
橋がなくなると小脳との情報のやり取りが不可能となり、“身体で覚える”ことができなくなる。
→ “身体で覚える”記憶や学習は小脳が担っている。
脳幹網様体
“網様体”と呼ばれることもある。
網目状に複雑に走る“神経線維網”と、その間に散在する神経細胞の集団からできている。
網様体には大脳皮質を覚醒させる役割があり、傷つくと昏睡状態となってしまい命に関わります。
橋網様体脊髄路(= 内側網様体脊髄路)
- 橋レベルの網様体から脊髄に向かう神経路で、錐体路の一つ
- 非交差性であり、前索を脳と同側、場所により両側を下降
- 橋網様体は反射の中枢であり、反射回路の興奮性を促通する
延髄
呼吸と循環器(心臓など)の制御。
心拍数の調節、血管の収縮と拡張、呼吸の調節、嚥下や嘔吐など生命活動に重要な中枢がある。
錐体交叉
- 皮質脊髄路の 3/4 が反対側へ(交叉する) → “外側皮質脊髄路”(脊髄側索を下行)
- 皮質脊髄路の 1/4 が同側へ(交叉しない) → “前皮質脊髄路”(脊髄前索を下行)
外側皮質脊髄路 | 前皮質脊髄路 | |
交叉 | 交叉する | 大部分は交叉する(脊髄の各レベル) |
割合 | 約 90% | 約 10% |
走行 | 脊髄側索(外側) | 脊髄前索(腹側) |
支配 | 主に四肢(運動野と反対側) | 体幹(両側) |
これにより
右脳に障害を受けると → 左片麻痺
左脳に障害を受けると → 右片麻痺
となります!
逆にいうと、“右片麻痺の方は言語機能障害を有する可能性がある”ということも考慮することができます。
前庭
前庭そのものは耳の“内耳”と呼ばれる箇所に位置します。
橋から延髄にかけて前庭の神経核が存在し、そこから複数の神経伝導路を形成するため、今回一緒に紹介することにしました!
前庭脊髄路
- 橋から延髄にある“外側前庭核”を起源とし、前庭器官からの重力情報に反応して頸部, 体幹, 下肢の筋緊張に関与する
- 四肢の主に同側の伸筋の運動ニューロンに対しては興奮作用を、屈筋の運動ニューロンに対しては介在ニューロンを介して抑制作用を及ぼす
- 下肢の屈筋を抑制し、伸筋の脊髄の反射回路の興奮性を促通させる
延髄網様体脊髄路(= 背側網様体脊髄路)
- 錐体外路の一つで、脊髄の反射経路の興奮性を抑制する
- 屈筋の収縮活動を高める
脳幹から出入りする脳神経
脳神経は全12対からなり、主に頸部以上の運動や感覚に作用しています。
番号による名称 | 固有名称 | 分類 | 支配領域 | 主なはたらき |
第Ⅰ脳神経 | 嗅神経 | 感覚 | 嗅上皮 | 嗅覚 |
第Ⅱ脳神経 | 視神経 | 感覚 | 網膜 | 視覚 |
第Ⅲ脳神経
|
動眼神経
|
運動 | 上眼瞼挙筋、上直筋、下直筋、内側直筋、下斜筋 | 眼球運動 |
自律 | 瞳孔括約筋、毛様体筋 | 瞳孔収縮 | ||
第Ⅳ脳神経 | 滑車神経 | 運動 | 上斜筋 | 眼球運動 |
第Ⅴ脳神経
|
三叉神経
|
感覚 | 顔面、角膜、鼻口腔粘膜 | 顔面の触覚、温痛覚、深部覚 |
運動 | 咀嚼筋(側頭筋、内外側翼突筋、咬筋) | 咀嚼 | ||
第Ⅵ脳神経 | 外転神経 | 運動 | 外側直筋 | 眼球運動 |
第Ⅶ脳神経
|
顔面神経
|
感覚 | 舌前方2/3味蕾 | 舌前方2/3の味覚 |
運動 | 顔面の表情筋 | 顔面の運動 | ||
自律 | 涙腺、顎下線、舌下腺 | 涙、唾液の分泌 | ||
第Ⅷ脳神経 | 内耳神経 | 感覚 | 三半規管、蝸牛内コルチ氏器官、卵形囊、球形囊 | 平衡感覚、加速度感覚、聴覚 |
第Ⅸ脳神経
|
舌咽神経
|
感覚 | 咽喉頭粘膜、内耳、頸動脈洞、舌後方1/3味蕾 | 咽喉頭知覚、舌後方1/3の味覚 |
運動 | 咽喉頭筋群 | 咽喉頭の運動 | ||
自律 | 耳下腺 | 唾液の分泌 | ||
第Ⅹ脳神経
|
迷走神経
|
感覚 | 耳介、外耳道、内臓からの知覚 | 耳の温痛覚、咽喉頭・胸腹部臓器の感覚、咽喉頭の味覚 |
運動 | 咽喉頭筋群 | 咽喉頭の運動 | ||
自律 | 胸腹部臓器 | 胸腹部臓器の運動 | ||
第Ⅺ脳神経 | 副神経 | 運動 | 胸鎖乳突筋、僧帽筋 | 胸鎖乳突筋、僧帽筋の運動 |
第Ⅻ脳神経 | 舌下神経 | 運動 | 舌筋群 | 舌筋の運動 |
副神経が胸鎖乳突筋や僧帽筋といった頸部の運動に作用していているのがポイントです!
脳神経の出ている場所 | ||||
脳内 | 嗅神経 | 視神経 | ||
中脳 | 動眼神経 | 滑車神経 | ||
橋 | 三叉神経 | 外転神経 | 顔面神経 | 内耳神経 |
延髄 | 舌咽神経 | 迷走神経 | 副神経 | 舌下神経 |
脳神経の覚え方ですが、感覚神経を「3」、運動神経を「5」、自律神経を「2」と数字に置き換える覚え方が有名です。
この数字の利用の仕方はこのような感じになります。
感覚神経(3) + 運動神経(5) + 自律神経(2) = 顔面神経(10)
番号による名称 | 固有名称 | 分類 | 支配領域 | 主なはたらき |
第Ⅰ脳神経 | 嗅神経 (3) |
感覚 (3) |
嗅上皮 | 嗅覚 |
第Ⅱ脳神経 | 視神経 (3) |
感覚 (3) |
網膜 | 視覚 |
第Ⅲ脳神経
|
動眼神経 (7) |
運動 (5) |
上眼瞼挙筋、上直筋、下直筋、内側直筋、下斜筋 | 眼球運動 |
自律 (2) |
瞳孔括約筋、毛様体筋 | 瞳孔収縮 | ||
第Ⅳ脳神経 | 滑車神経 (5) |
運動 (5) |
上斜筋 | 眼球運動 |
第Ⅴ脳神経
|
三叉神経
(8) |
感覚 (3) |
顔面、角膜、鼻口腔粘膜 | 顔面の触覚、温痛覚、深部覚 |
運動 (5) |
咀嚼筋(側頭筋、内外側翼突筋、咬筋) | 咀嚼 | ||
第Ⅵ脳神経 | 外転神経 (5) |
運動 (5) |
外側直筋 | 眼球運動 |
第Ⅶ脳神経
|
顔面神経
(10) |
感覚 (3) |
舌前方2/3味蕾 | 舌前方2/3の味覚 |
運動 (5) |
顔面の表情筋 | 顔面の運動 | ||
自律 (2) |
涙腺、顎下線、舌下腺 | 涙、唾液の分泌 | ||
第Ⅷ脳神経 | 内耳神経 (3) |
感覚 (3) |
三半規管、蝸牛内コルチ氏器官、卵形囊、球形囊 | 平衡感覚、加速度感覚、聴覚 |
第Ⅸ脳神経
|
舌咽神経
(10) |
感覚 (3) |
咽喉頭粘膜、内耳、頸動脈洞、舌後方1/3味蕾 | 咽喉頭知覚、舌後方1/3の味覚 |
運動 (5) |
咽喉頭筋群 | 咽喉頭の運動 | ||
自律 (2) |
耳下腺 | 唾液の分泌 | ||
第Ⅹ脳神経
|
迷走神経
(10) |
感覚 (3) |
耳介、外耳道、内臓からの知覚 | 耳の温痛覚、咽喉頭・胸腹部臓器の感覚、咽喉頭の味覚 |
運動 (5) |
咽喉頭筋群 | 咽喉頭の運動 | ||
自律 (2) |
胸腹部臓器 | 胸腹部臓器の運動 | ||
第Ⅺ脳神経 | 副神経 (5) |
運動 (5) |
胸鎖乳突筋、僧帽筋 | 胸鎖乳突筋、僧帽筋の運動 |
第Ⅻ脳神経 | 舌下神経 (5) |
運動 (5) |
舌筋群 | 舌筋の運動 |
この数字を語呂合わせにして「さんさん名古屋の後藤さんとうとうGO!GO!」という覚え方が有名です。
嗅神経 | 3 | さ ん |
視神経 | 3 | さ ん |
動眼神経 | 7 (= 5 + 2) | 名 |
滑車神経 | 5 | 古 |
三叉神経 | 8 (= 3 + 5) | 屋 の |
外転神経 | 5 | 後 |
顔面神経 | 10 (= 3 + 5 +2) | 藤 |
内耳神経 | 3 | さ ん |
舌咽神経 | 10 (= 3 + 5 +2) | と う |
迷走神経 | 10 (= 3 + 5 +2) | と う |
副神経 | 5 | GO! |
舌下神経 | 5 | GO! |
語呂合わせだけではなく、その内容もしっかり押さえましょう!!
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